current / upcoming / past > back to list

snow contemporary
Production image of “Ground and Sex” © Rintaro Fuse
布施琳太郎「性と大地」
会期:2024年5月31日(金)〜 7月6日(土)13:00 - 19:00
*日・月・火・祝日は休廊
会場:SNOW Contemporary / 東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404
オープニングレセプション:2024年5月31日(金)17:00 - 19:00

SNOW Contemporaryでは2024年5月31日(金)から7月6日(土)まで、布施琳太郎の個展「性と大地」を開催いたします。

1994年生まれの布施琳太郎は、iPhoneの発売以降、急速に拡散するメディア環境に生きる人間の認知や慣習、それによる社会と人の距離やコミュニケーションのあり方など、可視化されないが実在する意識の変容や違和感を、絵画や映像作品を通じて顕在化させた作品を制作しています。また布施は作品制作のみならず、批評や詩の執筆、展覧会企画、ウェブサイトの制作にいたるまで、精力的に表現活動を行なう同世代アーティストの中でも最も注目度の高いアーティストの一人です。

2020年、オンライン展「隔離式濃厚接触室」(1人ずつしかアクセスできないWebページ)、「新しい死体」( PARCO MUSEUM TOKYO)、2023年、「絶縁のステートメント」(SNOW Contemporary) など、立て続けに作品発表を行なう一方で、同年これまでに発表された作品を再編集し「涙」をテーマにした書き下ろしの新作多数を収録した初詩集『涙のカタログ』と、現在を生きるアーティストとして「二人であること」を徹底的に探求する著書『ラブレターの書き方』を発表するなどその活動は多岐に渡ります。本年はグループ展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」(国立西洋美術館)にも新作インスタレーションで参加をしています。

本展「性と大地」において布施は、対比や矛盾を多く孕むテーマに向き合おうとしています。これまでも人と人との関わり方、コミュニケーションについて多くの作品を発表してきた布施ですが、今回は人間や生物、神話から現代社会まで幅広いテーマが重層的に扱われています。今回布施は海堡(かいほ:砲台の配置された人工要塞)を思考の対象として選び、長い年月をかけて起きた事象や犠牲、産物について思考と想像力を巡らしています。展示予定となるビデオ作品、平面作品を通じ、布施は受け継がれる神話や過去の事象と向き合いながら、今の時代特有の感覚を未来に向けて歴史に刻もうと試みています。

布施の新たな試みを本展「性と大地」にて是非ご覧頂けますと幸いです。
展覧会によせて
布施琳太郎

四度目になるSNOW Contemporaryでの個展だが、ここでの個展はいつも、その後なされる活動の本質を抽出して、いちばん大切なところだけ先に示すような、そんな機会としてあった。今回は一点のビデオ作品、そして平面作品とアダルトグッズのプロトタイプを展示する。

今回の制作は、ひとつのバーチャルな大地についての調査と思考を、日本語における「性」と関係づけたものだ。この関心は、一方では埋立地における祝祭、万博、工業生産、美術品倉庫、タワーマンション建設などの正当性を確かめたいという想いが、もう一方には存在の生成を基礎付ける二者間の差異とはなんなのか?という疑問がある。

その思考の対象として、ひとつの海堡(かいほ)を選んだ。海堡とは砲台を備えた海上要塞である。今回の主題となるのは横須賀市観音崎沖に建設された「第三海堡」だ。高波にのまれて繰り返し土台が崩れ去り、当初の完成予定から大幅に遅れながらも、30年の月日をかけて1922年に竣工した第三海堡だったが、その直後の関東大震災によって海に沈んだ。

第三海堡跡は浦賀水道航路に隣接しており、海上交通とのかかわりから海難事故の原因として船舶側が撤去を望む一方、漁業関係者側は魚礁代わりの絶好の漁場として存続を求めていた。しかし1974年から2000年までの26年間に東京湾⼝で発⽣した主な海難事故の15 件のうち11件が第三海堡跡関連であり、2000年から7年をかけて座礁に関連する上方の撤去工事が行われた。

この海堡の砲台と倉庫の関係は、構造的に、哺乳類の性器と類似している。しかし現在の第三海堡跡は本来のかたちを失って、4つ(探照灯、観測所、砲台砲測庫、兵舎)に解体されて、横須賀の海岸沿い二箇所に展示されている。

私たちはここから複数の物語をつむぐことができる。繰り返される座礁によって要塞としてでなく人の死の理由になってしまった海堡。解体によって展示物になった海上の海堡。解体以前には魚たちの住処だった海中の海堡……ここから震災と戦争から日本の地政学を論じる批評を書くことができるし、海底廃墟における魚類や貝類の生態についての論文を書くこともできるかもしれない。しかし私が試みたいのは、人間にとって「性と大地」がどのように想起されるのかの解明である。そのために本展の制作はなされる。


snow contemporary

snow contemporary

snow contemporary

snow contemporary

snow contemporary

snow contemporary

snow contemporary

snow contemporary

snow contemporary

snow contemporary

2024 © SNOW Contemporary, All Right Reserved.