伊東篤宏「Return of pharmacist」
会期：2021年11月26日（金）- 12月25日（土）13:00 - 19:00
＊日・月・火・祝日は休廊
会場 : SNOW Contemporary / 東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404
SNOW Contemporaryでは2021年11月26日(金)-12月25日(土)まで美術家 / オプトロンプレーヤーである伊東篤宏の個展「Return of pharmacist」を開催いたします。
伊東篤宏は、1998年に蛍光灯を使用した自作音具「オプトロン」を開発。発光する際に放電されるノイズを増幅・制御することで放出される音と光の激しい明滅を繰り返す伊東のパフォーマンスは、「シンガ ポール アーツ フェスティバル 2010」やNam June Paik Art Center (韓国)など世界各地から数多くの招聘を受けてきました。
現在はパフォーマーとして高い評価を受けている伊東ですが、学生時代は絵画を専攻しておりその後も継続的に平面作品を制作していました。描くことが日常である伊東は、脳内に浮かぶ様々なイメージや思考、あるいは出来事を、メモをとるようにスケッチブックに描き続けてきました。それと同時に、判読できない文字と脈絡ないイメージとを組み合わせ、コピーを繰り返し、画面を切り刻んで再構築するなどの行為を積み重ねることで、解読不可能な情報が掲載されたイメージを大量に創出してきました。伊東はこれらの要素を組み合わせた作品群を、海外滞在中に目にするどこか親和性がありつつも読み込むことができない広告や新聞、チラシ類に囲まれた時に感じる、異邦者のような頼りない心持ちに例えています。
本個展のタイトル「Return of Pharmacist」は、10年前に発売したCD「Midnight Pharmacist」に由来します。医療と宗教が分化していない時代に祈祷師/薬剤師など万能の力を持つ人物を示したギリシア語の「pharmakon」を語源とした「pharmacist」をタイトルに据えた展覧会は図らずもそれぞれ、大震災と感染症という未曾有の災禍の年に開催されることとなり、現在の心許ない社会の様子を反映していると捉えることができるかもしれません。伊東篤宏が描く意味性を宙吊りにした視覚的な作品群は、オプトロンによって生み出される強烈な視覚・聴覚的空間と併存するパラレルワールドであると言えるのかもしれません。
Return of Pharmacist
伊東篤宏
2011年、震災後の余震と放射能汚染が囁かれる不安と混乱の最中に、私はソロアルバム「Midnight Pharmacist」(BLACK SMOKER RECORDS BSJ-005)を制作〜リリースした。
あれから10年。
Pharmacist は日本語で直訳すると「薬剤師」と翻訳されるが、その語源には 「Pharmakon〜Pharmakos / ファルマコン〜ファルマコス (を扱う者) 」という意味を持つ。
「ファルマコン〜ファルマコス」 とは大雑把にいえば、ヒトが「善と悪」や「正しさと誤り」、「毒と薬」等の二項対立の形で判断している事象が分別される前の、タマムシ色の状態そのもののことであり、それは文字通り 「毒にも薬にも なる / ならない 」という状態、ともいえる。
この世の中でそれを取り扱う者とは 薬剤師であったり、祈祷師や呪術師だったり、考え方や見方によっては医者も科学者も料理人もその領域に属する(時には芸術家と呼ばれる人も)。古来からの呼び方で言えば魔法使いと呼ばれたりするが、彼等の駆使する知恵や技術、技法は本来いずれも高い知識を持つ者〜専門家の領域にあり、誰もが安易に扱えるものではない。
言うまでもなく、私もそれを扱う事など到底出来ない。
「毒と薬」、「呪咀と祝詞」、「化学と祈り」の狭間を題材に、自分なりの考察と技法を音〜音楽の形式でCDアルバムとして発表した「Midnight Pharmacist」から10年後の2021年、世界は前年からのCOVID-19の大流行によって様々な変化を(半ば強制的に)余儀なくされている。
そんな時私に出来る事は、メディアを音楽から平面絵画の形態に変え、もう一度「彼 ／Pharmacist」 の帰還を祝う準備をする事くらいである。
会期：2021年11月26日（金）- 12月25日（土）13:00 - 19:00
＊日・月・火・祝日は休廊
会場 : SNOW Contemporary / 東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404
SNOW Contemporaryでは2021年11月26日(金)-12月25日(土)まで美術家 / オプトロンプレーヤーである伊東篤宏の個展「Return of pharmacist」を開催いたします。
伊東篤宏は、1998年に蛍光灯を使用した自作音具「オプトロン」を開発。発光する際に放電されるノイズを増幅・制御することで放出される音と光の激しい明滅を繰り返す伊東のパフォーマンスは、「シンガ ポール アーツ フェスティバル 2010」やNam June Paik Art Center (韓国)など世界各地から数多くの招聘を受けてきました。
現在はパフォーマーとして高い評価を受けている伊東ですが、学生時代は絵画を専攻しておりその後も継続的に平面作品を制作していました。描くことが日常である伊東は、脳内に浮かぶ様々なイメージや思考、あるいは出来事を、メモをとるようにスケッチブックに描き続けてきました。それと同時に、判読できない文字と脈絡ないイメージとを組み合わせ、コピーを繰り返し、画面を切り刻んで再構築するなどの行為を積み重ねることで、解読不可能な情報が掲載されたイメージを大量に創出してきました。伊東はこれらの要素を組み合わせた作品群を、海外滞在中に目にするどこか親和性がありつつも読み込むことができない広告や新聞、チラシ類に囲まれた時に感じる、異邦者のような頼りない心持ちに例えています。
本個展のタイトル「Return of Pharmacist」は、10年前に発売したCD「Midnight Pharmacist」に由来します。医療と宗教が分化していない時代に祈祷師/薬剤師など万能の力を持つ人物を示したギリシア語の「pharmakon」を語源とした「pharmacist」をタイトルに据えた展覧会は図らずもそれぞれ、大震災と感染症という未曾有の災禍の年に開催されることとなり、現在の心許ない社会の様子を反映していると捉えることができるかもしれません。伊東篤宏が描く意味性を宙吊りにした視覚的な作品群は、オプトロンによって生み出される強烈な視覚・聴覚的空間と併存するパラレルワールドであると言えるのかもしれません。
Return of Pharmacist
伊東篤宏
2011年、震災後の余震と放射能汚染が囁かれる不安と混乱の最中に、私はソロアルバム「Midnight Pharmacist」(BLACK SMOKER RECORDS BSJ-005)を制作〜リリースした。
あれから10年。
Pharmacist は日本語で直訳すると「薬剤師」と翻訳されるが、その語源には 「Pharmakon〜Pharmakos / ファルマコン〜ファルマコス (を扱う者) 」という意味を持つ。
「ファルマコン〜ファルマコス」 とは大雑把にいえば、ヒトが「善と悪」や「正しさと誤り」、「毒と薬」等の二項対立の形で判断している事象が分別される前の、タマムシ色の状態そのもののことであり、それは文字通り 「毒にも薬にも なる / ならない 」という状態、ともいえる。
この世の中でそれを取り扱う者とは 薬剤師であったり、祈祷師や呪術師だったり、考え方や見方によっては医者も科学者も料理人もその領域に属する(時には芸術家と呼ばれる人も)。古来からの呼び方で言えば魔法使いと呼ばれたりするが、彼等の駆使する知恵や技術、技法は本来いずれも高い知識を持つ者〜専門家の領域にあり、誰もが安易に扱えるものではない。
言うまでもなく、私もそれを扱う事など到底出来ない。
「毒と薬」、「呪咀と祝詞」、「化学と祈り」の狭間を題材に、自分なりの考察と技法を音〜音楽の形式でCDアルバムとして発表した「Midnight Pharmacist」から10年後の2021年、世界は前年からのCOVID-19の大流行によって様々な変化を(半ば強制的に)余儀なくされている。
そんな時私に出来る事は、メディアを音楽から平面絵画の形態に変え、もう一度「彼 ／Pharmacist」 の帰還を祝う準備をする事くらいである。
2021年11月
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