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布施琳太郎「名前たちのキス」

snow contemporary
布施琳太郎「名前たちのキス」
2021年5月28日(金) ー 6月26日(土) 7月3日(土) 13:00 - 19:00 
作品は毎時間 00分、20分、40分に上映されます。
*日・月・火・祝日は休廊

"好評につき1週間、会期を延長しました"
会場 : SNOW Contemporary / 東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404


SNOW Contemporaryでは2021年5月28日 ー 6月26日 7月3日まで布施琳太郎の個展「名前たちのキス」を開催いたします。

1994年生まれの布施琳太郎は、絵画や映像、iPhoneや印刷などの多岐に渡るメディアを用いながら、 展覧会企画、批評などの他分野において意欲的な活動を行っているアーティストです。 これまでに、スマートフォンの登場以降に構築された「錯乱した現実」を、 数万年前に洞窟壁画を描いた人々の自然への向き合い方と対照する企画展「iphone mural (iPhoneの洞窟壁画)」(2016)で 注目を集めて以降、徹底的に情報化した都市における芸術のあり方を提起する論考「新しい孤独」(2019)や、 新型コロナウイルスの感染拡大のなかで「一人ずつしかアクセスできないウェブページ」を用意して開催された展覧会「隔離式濃厚接触室」(2020)など、 急速に発達するメディアによって変化する人間の意識や行動、それによる社会と人の距離やコミュニケーションのあり方など、可視化されない、 しかし確実に存在する問題意識や違和感を感じ取り、同世代のアーティストや詩人、音楽家、 デザイナーなどと協働して巧みに顕在化する活動が高く評価されてきました。

この度の個展で布施は、 「名前」に着目した新作の映像作品1点を中心とし、数点のスプレー絵画も併せて発表いたします。 私たちは現在、コロナ禍による行動制限やリモートワークの急激な推進により、 社会と人との関係性に新たな繋がりと分断が生まれつつあることを感じています。布施は、密を避ける昨今の生活様式下において、 マッチングアプリの需要が急増しているというニュースに興味をひかれました。ハンドルネーム同士で出会い、 本当の名前すら知らないままに関係を深める人々のあり方が一般化した状況から、 「恋人たちの共同体」についてあらためて考えを深めることになったと言います。 本展を通じ、変わりゆく社会の意識や価値を布施がどう捉え、形にするのか、本展の作品群にご期待いただけると幸いです。
 
 

展示予定の作品について / 布施琳太郎
 
今回の個展は、この一年で利用者が急激に増えたマッチングアプリについてのリサーチに基づいた新作映像を中心に構成されます。 隙間をすり抜けて広がる感染症に対して、インターネットを介して都市のなかに複数の密室が育まれていく。 そうした景色を、安心と安全の境界が霧散した今日のなかで、想像するところから制作がはじまりました。

そして、まずはじめに《アノードとカソード》という詩を執筆しました。 それはネットワーク越しの出会いを、電子回路における正極と負極の名称である「アノード」と「カソード」を登場人物の名前としてメタファライズ(暗喩化)した物語です。 名前を知らない誰かと、名前を知らないまま関係を持ち、そこで共有される沈黙について想像をふくらませる。 そしてこの詩をもとに音楽家の荒井優作が音を作り、布施がインターネットで収集したフッテージと組み合わせて編集を行います。

アノードとカソードは、電気分解と電池の場合で正極と負極が入れ替わります。 アノードは電気分解において正極(電子が流れ出す極)ですが、電池の場合は負極(電流が流れ込む極)であり、そしてカソードはその逆となります。 その間にある半導体によって電気を光に変換するものが発光ダイオードであり、逆に光を電気にする性質を活用したものがソーラーパネルです。 こうした複数の「ふたつ/ふたり」のあいだで、エネルギーが育まれ、光がこぼれ落ち、正と負が入れ替わりながら、走り回るパーティクル。 それはこれまでリサーチを行ってきたネットワークのなかの恋、洞窟のなかの時間、接触の問題、そして現代詩の関係を整理、展開することを試みます。

その制作のプロセスは、ジョルジュ・バタイユが述べる「恋人たちの共同体」について思考することでもありました。 法に則って制度化された結婚による共同体が生産や再生産を目的とするのに対して、 二者関係において、エネルギーの蕩尽(とうじん)を目的とするのが「恋人たちの共同体」です。 そしてバタイユの思想が「男/女」のモデルに規定されていることに対して、 別の仕方で唯物論的にエネルギーや資本の問題を考えるために今回の制作は行われます。

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