雨宮庸介「空間には1点の果物彫刻と息ぎれ、のこりはすべてバックヤード」
会期:2020年9月11日(金)-10月10日(土)13:00 - 19:00
*日・月・火・祝日は休廊
オープニングレセプション : 9月11日(金) 17:00 - 19:00
会場 : SNOW Contemporary / 東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404
*Swan Song A の公開練習
- 以下の日程で雨宮の「公開練習」と銘打たれたパフォーマンスをご覧いただけます。
日程:9/11(金)、12(土)、17(木)、18(金)、19(土)、24(木)、25(金)
14:00~ / 16:00~ / 18:00~ *各回約20-30分予定 / 定員3名
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*公開練習中は予約されていない方のご入場は各回終了までお待ちいただく場合がございます。
*予定している会期、イベントは状況に応じて変更になる可能性があります。最新の情報はHP上にてお知らせいたしますので、ご来場前にご確認ください。
SNOW Contemporaryでは2020年9月11日(金)から10月10日(土)まで、雨宮庸介による個展「空間には1点の果物彫刻と息ぎれ、のこりはすべてバックヤード」を開催いたします。
1975年茨城県水戸市生まれの雨宮は、1999年多摩美術大学美術学部油画専攻卒業後、2011年に渡欧し、2013年にサンドベルグインスティテュート(アムステルダム)修士課程修了。現在はベルリンを拠点に活動しています。主な展覧会に「六本木クロッシング2010展;芸術は可能か?」(2010/森美術館)、「国東半島芸術祭-希望の原理」(2014/国東半島、大分)、「Wiesbaden Biennnale」(2018/ヴィースバーデン、ドイツ) 、「未来を担う美術家たち 20th DOMANI・明日展」(2018/国立新美術館)などがあり、彫刻や映像インスタレーション、パフォーマンスなど、さまざまな手法を用いて日常では意識されない普遍的な事象における境界線の再考を促すような作品を制作してきた美術家です。
これまでの雨宮の彫刻作品には、活動初期から発表し続けているリンゴの彫刻作品「apple」をはじめ、熊のぬいぐるみやカエル、バナナなど、あえてサイズに「実物大」と表記する作品が多く存在します。それら日常的な事物は、サイズも含め、本物のデティールに似せて繊細に制作されており、時に本物のリンゴより「リンゴらしい」存在感を放ちます。それは、「この世界『らしさ』を疑うことによって、ドミノエフェクト的にこの世界そのものが変質して見えること、そこに焦点を合わせている作品です」(雨宮庸介 個展「Ring Me Twice」[2018 / SNOW Contemporary] プレスリリースより抜粋)と、雨宮本人が述べるように、存在の境界線を問いかけてくる作品でした。
しかしながら、本展準備中にみまわれたコロナ禍の中、リモート職場やネットショッピングなどオンライン社会の仕組みが加速したことにより、雨宮は「実物大」であるとはどのようなことかをあらためて熟考しました。
この度の個展では、タイトル「空間には1点の果物彫刻と息ぎれ、のこりはすべてバックヤード」にある通り、バナナや柿、梨など複数のフルーツが台座上に構成された彫刻作品を1点、メインスペースに展示する予定です。これまで「実物大」の精緻な彫刻作品に挑んできた雨宮ですが、コロナ禍の状況下、本展に向けて再考した「実物大」の作品を体感し、現状の社会のあり方についてあらためて考える機会になれば幸いです。
■雨宮庸介 アーティストステートメント
今は2020年の8月6日木曜日の深夜です。
ここ数ヶ月世間の状況が変わり続けているので、個展のためのこの文章と状況があまりにフィットしていないのもどうかな、、、と思い、何度目かの書き直しをしているところです。
春から続くコロナ禍により芸術分野に限らず社会全体でさまざまな予定変更がありました。それに対して僕自身が適応した成果なのか、個展開催1ヶ月前にもかかわらず頭のどこかで「この個展、無くなることもあるかもな」と、予定変更についてほんの少しだけ頭のメモリを使いつつこの文章を書いています。いつもなら主に「展覧会というメタ構造にのせて、中身で何を話すか?」という構えが「展覧会をすること」にあたることだったと思うのですが、今は特に(感染症対策という運営上の意味でも)展覧会そのものについて考える機会が多いのはたしかです。それが今年だけに存在することなのか、それとも今後ずっとそうなのかはわかりません。しかし、どちらにしてもこの時代をきちんとキャプチャするという意味においても、間違いなく分水嶺の一つである2020という年にだけに在り得る展覧会のタイトルと内容にしたいと考えました。
そもそもこの段落で書きはじめていた「もう一つの確かな分水嶺としての2011年に対して僕が何を行なったか」は長いので割愛しますが、その代わりに個展中に行われる「公開練習」で触れられたらと考えています)
実は僕自身、なりゆきも含めコロナ禍におけるオンラインのサイトもストリーミングもわりと積極的に関わっています。そこであらためて自覚したことは、オンライン最大の強みは「実物大」の自分に縛られなくて良いところです。とても当たり前の話ですが、実際の自分の質量にそぐわなくてもいい、というよりもむしろそぐわないほうが情報を効率よく流通させることができます。そう考えると、逆にオンラインでは代替えがきかないこととはなんでしょう。外出するリスクがゼロとは言えないこの時期にわざわざ身体を召喚しなおし、ギャラリーという実空間に「実物大」の自分を物理的に運び入れてもらうその時に何が出迎えるべきか、それこそがこの時期に展覧会をするすべての人の命題になってくるんだろうなと感じています。
ここで僕がだしたとりあえずの答えは、そうであるならば身体という「実物大」に対して「実物大」で対峙する構造の展覧会を作りたくなりました。そこには「実物大」という機能をつたって、卑近な小さい出来事が中間項を経由しないで世界の大きな物語に直結するかもしれないという一昔前のセカイ系的想像力をリアルな世界で展開可能かもしれないという希望に基づいています。(つい最近“逆の”形式のオンラインストリーミングイベントにも同じような文章を書いたおぼえがあるので、きっと今までよりも多くの人が想像力を部屋で発揮している時代が来ているため、そんな今のコロナ禍の状況がセカイ系の構造と親和性が高いんだろうと思います。)
今決めている展覧会タイトルは展覧会そのものを語り「空間には1点の果物彫刻と息ぎれ、のこりはすべてバックヤード」です。会場にある1点は「実物大」のフルーツ盛りのような彫刻を展示する予定です。各フルーツにはロールシャッハテストのように他のフルーツと直接接触した結果としての絵の具が2色ずつ付着しています(フルーツも絵の具も同じ絵の具でできています)。展覧会タイトルにある「息切れ」はまさにパフォーマンス関連のことで、息のような「実物大」でありながら不定形なものを、この状況のなか、いかに展覧会にインストールできるかを考えているのですが、それはまた開催当日の社会状況によって形式の最適解を求めることになりそうです。
(もし展覧会が無事に開催されたなら)コロナ禍によってさらにオンライン化が加速されているこの情報社会においてなお、いやおうなく付き合わざるをえない質量ある重たい身体やそれをとりまく世界というものを再考するための場として展覧会が機能してほしいと願っています。また、こんな時勢だからこそ可能な、身体論や彫刻論にプラグイン可能ないくつかの「実物大」を展覧会に実装しておこうと考えているところです。
雨宮庸介
会期:2020年9月11日(金)-10月10日(土)13:00 - 19:00
*日・月・火・祝日は休廊
オープニングレセプション : 9月11日(金) 17:00 - 19:00
会場 : SNOW Contemporary / 東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404
*Swan Song A の公開練習
- 以下の日程で雨宮の「公開練習」と銘打たれたパフォーマンスをご覧いただけます。
日程:9/11(金)、12(土)、17(木)、18(金)、19(土)、24(木)、25(金)
14:00~ / 16:00~ / 18:00~ *各回約20-30分予定 / 定員3名
ご予約フォーム
*公開練習中は予約されていない方のご入場は各回終了までお待ちいただく場合がございます。
*予定している会期、イベントは状況に応じて変更になる可能性があります。最新の情報はHP上にてお知らせいたしますので、ご来場前にご確認ください。
SNOW Contemporaryでは2020年9月11日(金)から10月10日(土)まで、雨宮庸介による個展「空間には1点の果物彫刻と息ぎれ、のこりはすべてバックヤード」を開催いたします。
1975年茨城県水戸市生まれの雨宮は、1999年多摩美術大学美術学部油画専攻卒業後、2011年に渡欧し、2013年にサンドベルグインスティテュート(アムステルダム)修士課程修了。現在はベルリンを拠点に活動しています。主な展覧会に「六本木クロッシング2010展;芸術は可能か?」(2010/森美術館)、「国東半島芸術祭-希望の原理」(2014/国東半島、大分)、「Wiesbaden Biennnale」(2018/ヴィースバーデン、ドイツ) 、「未来を担う美術家たち 20th DOMANI・明日展」(2018/国立新美術館)などがあり、彫刻や映像インスタレーション、パフォーマンスなど、さまざまな手法を用いて日常では意識されない普遍的な事象における境界線の再考を促すような作品を制作してきた美術家です。
これまでの雨宮の彫刻作品には、活動初期から発表し続けているリンゴの彫刻作品「apple」をはじめ、熊のぬいぐるみやカエル、バナナなど、あえてサイズに「実物大」と表記する作品が多く存在します。それら日常的な事物は、サイズも含め、本物のデティールに似せて繊細に制作されており、時に本物のリンゴより「リンゴらしい」存在感を放ちます。それは、「この世界『らしさ』を疑うことによって、ドミノエフェクト的にこの世界そのものが変質して見えること、そこに焦点を合わせている作品です」(雨宮庸介 個展「Ring Me Twice」[2018 / SNOW Contemporary] プレスリリースより抜粋)と、雨宮本人が述べるように、存在の境界線を問いかけてくる作品でした。
しかしながら、本展準備中にみまわれたコロナ禍の中、リモート職場やネットショッピングなどオンライン社会の仕組みが加速したことにより、雨宮は「実物大」であるとはどのようなことかをあらためて熟考しました。
この度の個展では、タイトル「空間には1点の果物彫刻と息ぎれ、のこりはすべてバックヤード」にある通り、バナナや柿、梨など複数のフルーツが台座上に構成された彫刻作品を1点、メインスペースに展示する予定です。これまで「実物大」の精緻な彫刻作品に挑んできた雨宮ですが、コロナ禍の状況下、本展に向けて再考した「実物大」の作品を体感し、現状の社会のあり方についてあらためて考える機会になれば幸いです。
■雨宮庸介 アーティストステートメント
今は2020年の8月6日木曜日の深夜です。
ここ数ヶ月世間の状況が変わり続けているので、個展のためのこの文章と状況があまりにフィットしていないのもどうかな、、、と思い、何度目かの書き直しをしているところです。
春から続くコロナ禍により芸術分野に限らず社会全体でさまざまな予定変更がありました。それに対して僕自身が適応した成果なのか、個展開催1ヶ月前にもかかわらず頭のどこかで「この個展、無くなることもあるかもな」と、予定変更についてほんの少しだけ頭のメモリを使いつつこの文章を書いています。いつもなら主に「展覧会というメタ構造にのせて、中身で何を話すか?」という構えが「展覧会をすること」にあたることだったと思うのですが、今は特に(感染症対策という運営上の意味でも)展覧会そのものについて考える機会が多いのはたしかです。それが今年だけに存在することなのか、それとも今後ずっとそうなのかはわかりません。しかし、どちらにしてもこの時代をきちんとキャプチャするという意味においても、間違いなく分水嶺の一つである2020という年にだけに在り得る展覧会のタイトルと内容にしたいと考えました。
そもそもこの段落で書きはじめていた「もう一つの確かな分水嶺としての2011年に対して僕が何を行なったか」は長いので割愛しますが、その代わりに個展中に行われる「公開練習」で触れられたらと考えています)
実は僕自身、なりゆきも含めコロナ禍におけるオンラインのサイトもストリーミングもわりと積極的に関わっています。そこであらためて自覚したことは、オンライン最大の強みは「実物大」の自分に縛られなくて良いところです。とても当たり前の話ですが、実際の自分の質量にそぐわなくてもいい、というよりもむしろそぐわないほうが情報を効率よく流通させることができます。そう考えると、逆にオンラインでは代替えがきかないこととはなんでしょう。外出するリスクがゼロとは言えないこの時期にわざわざ身体を召喚しなおし、ギャラリーという実空間に「実物大」の自分を物理的に運び入れてもらうその時に何が出迎えるべきか、それこそがこの時期に展覧会をするすべての人の命題になってくるんだろうなと感じています。
ここで僕がだしたとりあえずの答えは、そうであるならば身体という「実物大」に対して「実物大」で対峙する構造の展覧会を作りたくなりました。そこには「実物大」という機能をつたって、卑近な小さい出来事が中間項を経由しないで世界の大きな物語に直結するかもしれないという一昔前のセカイ系的想像力をリアルな世界で展開可能かもしれないという希望に基づいています。(つい最近“逆の”形式のオンラインストリーミングイベントにも同じような文章を書いたおぼえがあるので、きっと今までよりも多くの人が想像力を部屋で発揮している時代が来ているため、そんな今のコロナ禍の状況がセカイ系の構造と親和性が高いんだろうと思います。)
今決めている展覧会タイトルは展覧会そのものを語り「空間には1点の果物彫刻と息ぎれ、のこりはすべてバックヤード」です。会場にある1点は「実物大」のフルーツ盛りのような彫刻を展示する予定です。各フルーツにはロールシャッハテストのように他のフルーツと直接接触した結果としての絵の具が2色ずつ付着しています(フルーツも絵の具も同じ絵の具でできています)。展覧会タイトルにある「息切れ」はまさにパフォーマンス関連のことで、息のような「実物大」でありながら不定形なものを、この状況のなか、いかに展覧会にインストールできるかを考えているのですが、それはまた開催当日の社会状況によって形式の最適解を求めることになりそうです。
(もし展覧会が無事に開催されたなら)コロナ禍によってさらにオンライン化が加速されているこの情報社会においてなお、いやおうなく付き合わざるをえない質量ある重たい身体やそれをとりまく世界というものを再考するための場として展覧会が機能してほしいと願っています。また、こんな時勢だからこそ可能な、身体論や彫刻論にプラグイン可能ないくつかの「実物大」を展覧会に実装しておこうと考えているところです。
雨宮庸介
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