SNOWcontemporary

「明日は、はじめて見る今日」

これまでに生まれた多くのアートは、社会が当然のように共有・認識している「常識」を疑い、そこから派生する「違和感」に向き合ってきました。しかし 2011 年 3 月 11 日以降、日本に暮らす人の多くは、意識せずとも、社会とその常識のあり方から住居や食物、日々の生活にいたる一つ一つへの判断に迷い、根本的な地点から疑いをもち、生活に違和感を感じるようになっています。また、このような疑念と違和感を共有する多数の人に対して、逆に違和感をもつ人も存在します。東日本大震災は、私たちのこれまでの生き方を身体的・精神的に変容せざるをえないインパクトと、多くの分断をもたらしました。私たちは、私たちが属する社会を捉え直しはじめています。様々な不安に抗いながら心のあり方を探る多くの人に、 今こそアートは有効であるはずです。

本展覧会では、SNOW Contemporaryの作家を中心に紹介します。アーティスト・ホーメイ歌手の山川冬樹、画家の日野之彦とジャンボスズキ、アニメーションで物語を紡ぐALIMO、彫刻家の飯沼英樹、蛍光灯を使用した「オプトロン」でインスタレーションとパフォーマンスを展開する伊東篤宏、身体と映像の関係性を問うオフ-ニブロール、ストリートアーティストの枠を超え世界的に活躍するSWOON、そしてあ らゆるメディアを駆使し表現活動をする竹内公太の 9 組です。各アーティストの世代やキャリア、表現方法やコンセプトはそれぞれ異なりますが、彼らの作品は、現在の社会や生活から生じる違和感を鮮やかに描き出している点で共通しています。

「明日は、はじめて見る今日」は、鑑賞者の想像力への問いかけです。いつ襲ってくるかわからない地震や放射能、安全性が問われる食物や日々の生活など、明日への不安と恐怖の存在は今、きわめて具体的になってきています。突如抱えることとなったこうした不安感に対抗できるのは、私たちの内から生まれる想像力ではないでしょうか。
今回紹介するアーティストの表現は、日常を未知の冒険世界へと転換させる力をもっています。自らの想像力を重ね、今日ここにある現在だけではなく、明日へつながる過去や未来に思いを馳せてみてください。 本展覧会を通じて、鑑賞者自らが作家の表現を主体的に体験し共有することにより、自らをも見つめ、各人の明日が「はじめて見る今日」となる一助になれば幸いです。

SNOW Contemporary
ディレクター 石水美冬



プレスリリース(pdf)はこちら

会期:2012年9月14日(金) ‒ 30日(日)
開場時間:12:00 ‒ 20:00 休廊日:9 月 18 日(火)・24 日(月)
会場:XYZ collective (SNOW Contemporary) /東京都世田谷区弦巻 2-30-20 1F
参加作家:ALIMO、飯沼英樹、伊東篤宏、オフ-二ブロール、ジャンボスズキ、SWOON、竹内公太、日野之彦、山川冬樹
オープニングレセプション:9 月 14 日(金) 18:00 - 20:00
伊東篤宏/オープニングパフォーマンス:9 月 14 日(金) 18:30 ‒ 18:45

展覧会風景

撮影:木奥恵三

参加作家 略歴

ALIMO

アニメーション作家、画家。1977年 山口県生まれ。神奈川県在住。
医療カメラマン、インド留学を経て、2012年東京藝術大学大学院映像研究科修了。主な展覧会に、「ザグレブ国際アニ メーション映画祭2012」(2012 / クロアチア)、「Animated Dreams 2011」(2011 / エストニア)、個展「ヒロナガ ヤマモトアリモチ/」(2010 / Art Center Onging 東京)、「動く絵」(2011 / SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム)などがあり、その作品は国内外で上映されている。2008年に第11回岡本太郎現代芸術賞特別賞を受賞。今年9月より、文化庁新進芸術家海外研修員としてエストニアに滞在予定。 ペインティングと撮影、編集の工程をひたすら何回も積み重ねることによって完成させる「アニメーション・タブロー」という独自の方法論で、絵画とアニメーションを融合した表現に取り組む。

飯沼 英樹

彫刻家。1975年 長野県生まれ。東京都在住。
1998年愛知県立芸術大学大学院卒業後、ナント国立美術大学に入学。同学のヨーロッパ高等教育交流プログラム (ERASMUS)によりコペンハーゲン、ミラノ、カールスルーエに留学し、各地で個展やグループ展に出品。主な展覧会に、個展「美女」(2011 / SNOW Contemporary / SLANT 金沢)、「TOKYO PARIS ROTTERDAM」(2011 / Tongerlohuys美術館 オランダ)、東日本復興支援アート&チャリティプログラム「KISS THE HEART#1」(2012 / 三越伊勢丹)がある。2005年エルンスト・バルラッハ賞(ドイツ)受賞。飯沼は一貫して都市に生きる女性を主題としている。それは男性である作家の中の「女性性」を顕在化させる作業であるとともに、男性の視点から見た女性の神秘性や力強さを表現するものでもある。

伊東 篤宏

美術家、オプトロン・プレーヤー。1965年 生まれ。東京都在住。
1992年多摩美術大学大学院美術研究科修了。1990年代より蛍光灯を素材としたインスタレーションを制作。98年から展覧会などでサウンド・パフォーマンスを開始し、インスタレーション作品と同素材である蛍光灯を使用した 自作”音具”「オプトロン」を制作。個展やソロ・パフォーマンスのほかに、複数のユニットでも活動中。2009年には自身のレ ーベル「GOTOBAI recordings」を始動する。
主な展覧会に、「六本木クロッシング / New Visions Contemporary Japanese Art 2004」(2004 / 森美術館)、 個展「V.R.」(2009 / 原美術館)、個展「Paint & Collage Works 2010」(2010 / NADiff a/p/a/r/t)などがある。また伊東のパフォーマンスは、「シンガポール アーツ フェスティバル 2010」(2010 / Supperclub シンガポ ール)や「NJP SUMMER FESTIVAL 21ROOMS」(2011 / Nam June Paik Art Center 韓国)など、世界各地から招聘を受けている。 2012年12月に、SNOW Contemporaryにて個展開催予定。

オフ-ニブロール

映像作家・高橋啓祐と振付家・矢内原美邦によるユニット。
主な展覧会に、「六本木クロッシング」(2004 / 森美術館)、個展「Artist meets KURASHIKI vol.5」(2009 / 大 原美術館)、「SHANGHAI eArts Festival」(2009 / 釜山市立現代美術館 韓国)、個展「a quiet day」(2012 / 横 浜創造都市センター)などがある他、越後妻有アートトリエンナーレ(2006)や上海ビエンナーレ(2004)といった国際展にも参加。国内外にて活躍する。2004年に森美術館「六本木クロッシング」森美術館会員特別賞、2008年に広島市現代美術館「Re-Act 新・公募展2007」市民賞を受賞している。劇場をはじめ、美術館、ギャラリー、パブリックスペースなど多様な空間で作品を発表。映像インスタレーションとともにダンスパフォーマンスも展開し、身体と映像の関係性を追求している。

ジャンボスズキ

画家。1980年東京都生まれ。
2007年名古屋造形大学美術学科卒業。主な展覧会に、「VOCA 展」(2008 / 上野の森美術館)、「TDW-ART ジ ャラパゴス展」(2010 / Tokyo Designers Week)、「Art in an Office」(2011 / 豊田市美術館)、個展「愛の風景」(2011 / SNOW Contemporary)がある。 自らの記憶と想像力、そして感覚のみを頼りに、頭に浮かぶイメージをたどり、時にはイメージ同士を連想させながら 独自の世界を構築する。

SWOON

アーティスト。1977 年コネチカット州ニューロンドンに生まれる。ニューヨークブルックリン在住。
ニューヨークの Pratt Institute 在学中からストリートアーティストとして活躍。近年は、美術館やギャラリーでも展覧会を多数開催。主な展覧会に、「Thalassa」(2011 / ニューオリンズ美術館)、「Art in the Streets」(2011 / ロ サンゼルス現代美術館)、「Inside Out Outside In」(2011 / サンパウロ美術館)、「Honeycomb」(2012 / SNOW Contemporary)などがある。ニューヨーク近代美術館、テートモダン、ロサンゼルス現代美術館、PS1 など世界各国に作品がコレクションされる。 友人や知人をはじめとした普通の生活を営む人々をモデルに、個々人の持つ内面的な美しさを切り紙や木版などの手法 で繊細かつ大胆に表現する。

竹内 公太

アーティスト。1982 年兵庫県生まれ。
2008年東京芸術大学美術学部先端芸術表現科を卒業。近年の展覧会に、奨励賞を受賞した「群馬青年 ビエンナーレ 2010」(2010 / 群馬県立近代美術館)や「ソーシャルダイブ 探検する想像」(2011 / 3331Arts Chiyoda)、個展「公然の秘密」(2012 / SNOW Contemporary)、「ひっくり返る」(2012 / ワタリウム美術館)などがある。公共性と集団意識に対する無意識の依存と疑念をテーマとし、都市風景やパブリック・アートなど人工的に規定された 風景やルールに対する身体的アプローチをもとに制作活動を続けている。

日野 之彦

画家。1976 年 石川県輪島市生まれ。東京都在住。 2001年筑波大学大学院芸術研究科美術専攻洋画分野を修了。現在、多摩美術大学講師。主な展覧会に、「ライフ」(2006 / 水戸芸術館現代美術ギャラリー)、個展「Wandering and Questioning」(2010 / 上海美術館)、個展「日野之彦 - そこにあるもの」(2011 / 上野の森美術館ギャラリー)がある。2003 年トーキョーワンダーウォール賞、2005年VOCA賞を受賞。文化庁、上海美術館、石橋財団石橋美術館などに作品が所蔵されている。 日野が描くうつろに見開いた目に半開きの口、幼児的なポーズをとった言いようのない不安定な人物像は、現代社会で誰もが抱えている社会への不安や虚無、狂気といった時代の空気を鮮やかにうつしだしている。 2013年5月には、SNOW Contemporaryにて個展を開催予定。

山川 冬樹

ホーメイ歌手、アーティスト。1973年 ロンドン生まれ。横浜市在住。
1997年多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業し、1999年同大学大学院美術研究科修士課程修了。現在、東京 藝術大学、多摩美術大学非常勤講師。 自らの身体内部で起きている微細な活動を音と光として空間に還元し、観客の視覚、聴覚、皮膚感覚に訴えかけるパフ ォーマンスで、音楽、美術、舞台芸術の境界線を横断する脱領域的な活動を展開する。多様な分野のアーティストとのコラボレーションも多く、世界各地から招聘を受けている。主な展覧会に、「釜山ビエンナーレ2008」(2008 / 釜山 市立美術館)、「アトミックサイト」(2011 / 現代美術製作所)、「MOTコレクション Plastic Memories ‒ いまを照らす方法」(2010 / 東京都現代美術館)などがある。近年のパフォーマンス「黒髪譚歌」(2010 / VACANT) や愛知トリエンナーレでの「Pneumonia」(2010 / 愛知芸術文化センター)は、内包するテーマの切り口と深い物語性が高い評価を受ける。一人の男の声をめぐって日本社会と個人の記憶が交差する映像インスタレーション『The Voice-over』(2008)は、東京都現代美術館に所蔵されている。